今回は、在宅介護を前提としたサービスを提供している「株式会社やさしい手」の訪問介護フランチャイズについて見ていきましょう。

やさしい手は、“年齢を重ねても住み慣れた地域社会でご家族と共に暮らせるように”という理念を持って立ち上げられ、社長は厚生労働省の「24時間地域巡回型訪問サービス提供におけるケアマネジメントのあり方の調査事業」で、自ら委員を務めるほど、在宅支援に力を入れています。

※2019年3月時点、やさしい手WEBサイトから抜粋

競合としては、「茶話本舗」「介護24」などが挙げられますが、やさしい手は50年以上にわたり看護婦・家政婦の紹介業を行なってきた「株式会社大橋サービス」が前身で、そこで培ったノウハウをやさしい手の介護事業に活かしてきました。

立ち上げやすいが廃業も多い! 差別化が必要な介護業界

2018年、日本では65歳以上が3,557万、70歳以上は2,618万人となりました。高齢者の増加に伴い、介護サービスの利用者数も増えています。

事業者がいくらあっても足らないのでは?と思いますよね。しかし、そうともいえないようです。現在、訪問介護事業所は全国に33,284(2017年迄調査分)件あります。

結論から言うと、要介護者よりも訪問介護事業所数の方が多くなってきています。
訪問介護事業所は立ち上げがしやすく、オーナーになるだけなら資格は必要無いからです。実務未経験からでも開業できることをウリにしているフランチャイズもあるくらいです。

しかし、立ち上げやすいとはいえ、法改正や深刻な人手不足の影響で、廃業に追い込まれるケースも少なくありません。

このような状況ではありますが、市場規模は大きく、現在10兆円のところが今後20兆円になるとされているので、地域に根ざしたサービス提供や利用者に寄り添った支援をしている事業者は生き残ることができるのではと考えられます。

いかに単価の高いサービスを提供できるかがキモ

訪問介護で行うサービスは、身体介護(体に触れる介護)と生活援助(体に触れない支援)の2つに分けられます。身体介護の方が生活援助より単価が高いので、いかに身体介護を多く取れるかで事業の明暗が分かれてきます。

身体介護の時間は20分未満や20分以上30分未満などがありますが、生活援助は20分以上45分未満からが基本。身体介護の場合、20分サービス提供した場合と、30分サービス提供した場合ではもらえる報酬が変わりますが、生活援助の場合は20分やっても30分やっても、もらえる報酬は変わりません。

そのため、短い時間で身体介護を数多くサービス提供した方が、より多く報酬をもらえることになるのです。その点を理解しているのとしていないのでは、大きな差がついてきます。

やさしい手フランチャイズの場合は

高齢者の身体介護以外に介護保険適用外の家事代行や子供の見守りなどを行うサービスもあります。そのため、この介護保険適用外サービスの利用者を増やすのも、フランチャイズ運営成功のポイントといえます。

単価の高いサービス獲得のポイントは2つです。
1つ目は、ケアマネージャーやご利用者家族との信頼関係を築くことです。利用者の在宅介護全体を統括しているのは、ケアマネージャーです。

どこの事業者を利用してもらうかを選定するのも、ケアマネージャーが行います。ご家族からの要望も聞いた上で、信頼関係を築いている事業者へサービスを振ってくれることが多いです。

2つ目は、広告です。チラシなら、身体介護についての記載が目につきやすいデザインにして、身体介護に力を入れていることを、ケアマネージャーに向けてアピールします。

先述のように、サービスを統括しているのはケアマネージャーであり、どこの訪問介護事業者を使うか考える時に、インターネットで検索したり営業チラシを参考にしたりしているからです。やさしい手では、チラシ作成ツールも用意しているため、チラシ作成が苦手な方でも簡単に作成できます。

初期費用の壁は高いも、サポート体制は充実

やさしい手フランチャイズ加盟者の収支シミュレーション

  • 加盟金:200万円(税別)
  • 保証金:50万円
  • 研修費:100万円(税別)
  • その他(開業諸経費+運転資金等):2000万円程度
  • ロイヤリティ:毎月々の売上総額の5%(その他システム 費用が別途(月額)必要)
  • 物件費用:?

引用:http://www.yasashiite.com/subdomains/div_page/12/1/

開業資金として2,000万円以上かかりますが、特に下記3点について、サポートが充実しているように思います。

1つ目は、研修制度。フランチャイズ事業運営にあたって必要な知識を得られる講義や、実地研修もあります。デイサービスやショートステイなど、訪問介護以外の事業も行っているやさしい手だからこそ、受けられる研修といえるでしょう。

2つ目は、独自のシステムです。やさしい手では独自のシステムを使用しており、全ての利用者の利用状況や体の状態だけでなく、請求情報なども一元管理することができます。加盟店が一人一人管理していくのは至難の業なので、このシステムが利用できる点は大きなメリットになりそうです。

3つ目は、支援体制です。開業に必要な手続きの支援を受けられるだけでなく、フランチャイズ担当者や有資格者へ相談することもできます。オーナー同士で集まり、情報共有をする場もあります。

実務経験が少なくても条件を満たしていれば加盟でき、実地研修も受けることができ、現場を知りながらフランチャイズ事業の開業準備を進めることもできます。

しかし、やさしい手本部からの支援だけでフランチャイズ事業を成功させることは難しく、加盟者本人の努力が必要な面もあります。それは、地域のことをよく知ることです。
もちろん、本部からの営業支援もありますが、消費者が見ず知らずの人に仕事をお願いするとは考えにくいのではないでしょうか。
地域の人々と信頼関係を築いて、「あの人にお願いしたい」と思ってもらえるようにならないと、数多くある訪問介護事業所の中から選んでもらうのは厳しいのではないでしょうか。同じ、「家に入れる」という仕事でも、家事代行サービスなどとは違って介護は特に繊細な話になってくるからです。

訪問介護フランチャイズとやさしい手に関する総括

高齢者の増加に伴って訪問介護事業所も増えました。
しかし、訪問介護はデリケートなサービスではありますが、ご利用者やその家族への気遣いを大切にしたサービスが提供できれば、新規参入であっても受注に繋がっていくと思います。

他のフランチャイズに比べるとまだ芽が出たばかりではありますが、少しずつ広げている各種サービス(デイサービスや居宅介護支援事業所など)と連携して、ご利用者が安心して利用できるサービス提供を目指すやさしい手に今後も期待したいですね。